641 友達という存在

「山口県酒豆本」の編集長、畠本拓実さん=広島県尾道市出身=。徳山大学(現・周南公立大学)時代、山口県周南市の「中嶋酒店」でアルバイトに打ち込むうちに、山口県産日本酒のうまさに惚れ込んだ。

酒豆本は豆本第5弾になるが、学生からのテーマ提案は初めてのことだった。「カレー豆本やパン豆本ほど売れないな」と内心思いつつ、2021年夏から畠本さんの取材はスタートした。

粘り強い取材活動だった。山口県内のすべての25酒蔵を回り、地元のお酒を提供する飲食店を徹底的に取材した。クラウドファンディングでも制作費用70万円を集めた。

入稿締切が近づいてきた2021年2月、さすがに彼自身が息切れ。やる気は十分なのだが、「料理写真をうまく撮れない」という技術的弱さもあり、スランプに陥ったのだ。

その窮地を救ってくれたのが大学同期の甲斐翼さん=宮崎県日向市出身=だった。「取材に同行してやってほしい」との私の申し出を快諾してくれた。

酒蔵や飲食店に畠本さんと一緒に行き、店主から話を聞き、撮影構図を考えてくれた。

「拓実は行動したり、アイデアを出すのは得意ですが、計画を立てたりすることが少し苦手なところがあります」

とのLINEメッセージ。

甲斐さんの洞察力に心打たれた。
取材最終盤の最強助っ人だった。
■「山口県酒豆本」の取材に打ち込む畠本さん(右)と甲斐さん