659 食性について

グルメ豆本を出版しているので、世の美味いものを食べてみたいと思う。

取材を経て、食の好みは人それぞれであることをあらためて感じている。

だいぶ前、実父とカレーライスについて話したとき、「子どもの頃は鯨肉だった」と話していた。水産長崎のころ。オヤジ(私の祖父)も船乗り。

食卓の肉は鯨肉だったという。

「また食べたいか。美味いのか」と父に聞くと、「いや、もういい。今の方が絶対に美味い」と答えてくれたのをよく覚えている。

食には、こういった世代間格差が相当にある。

なので、味の評価は本当に難しい。

その人の生まれ育ちや食生活、その後の生きざまが露骨に投影される。

例えば、かまぼこだって、本場長崎で取材したときも、すでに、スケソウダラが味のベースだった。主原料。安価で調達しやすく(当時は)、味がマイルドになり、食べやすいと聞いた。

当然、地域性もある。

漁業が盛んな地域に仕事で住んだことがあるが、魚が嫌いという漁業者も結構いた。

スイーツなんか特にそうだろう。
私が子どもだった昭和40年代、50年代より、今の方がはるかに美味しいのだろう。

豆本でこれが美味いと自分の感覚を頼りにしているものの、本当にこれでよいのかとの思いは常につきまとう。